神道夢想流杖道

2008年12月20日 筑波山神社奉納演武
神道夢想流杖道 奥伝「水月」

<神道夢想流とは?>
 「神道夢想流」は杖道の流派の1つで,約400年前に「夢想権之助勝吉」が創始したと言われている。昭和初期には警視庁に採用され全国に普及し,現在では年齢・性別問わず楽しめる生涯武道として,国内はもとより海外にも多くの愛好者を持つに至っている。

<杖道とは?>
 杖道は「杖」と「太刀(木刀)」を用いて行う形武道で,杖は長さ四尺二寸一分(約128cm),直径八分(約26mm)の丸い樫の棒である。ちょうど両手を広げた中に程良く入る長さとなっており,斬り込んでくる太刀に対して「突く・払う・打つ」等の技を左右均等に繰り出すことが出来る。

<形武道とは?>
 形武道とは,一般に攻撃と防御を合理的に組み合わせた「決められた形」を繰り返し稽古するものである。剣道のように直接打ち合うことがないため,老若男女問わずそれぞれの年齢や体力に応じた稽古が可能である。
 基本技
 杖道において最も重要となる基本の技で,単独動作と相対動作に分かれている。この後の形は全て「基本技の組み合わせ」であり,当会でも最も時間をかけて稽古する部分。
  ・本手打(ほんてうち)
  ・逆手打(ぎゃくてうち)
  ・引落打(ひきおとしうち)
  ・返 突(かえしづき)
  ・逆手突(ぎゃくてづき)
  ・巻 落(まきおとし)
  ・繰 付(くりつけ)
  ・繰 放(くりはなし)
  ・体 当(たいあたり)
  ・突外打(つきはずしうち)
  ・胴払打(どうばらいうち)
  ・体外打(たいはずしうち)


 特殊技
 これらの技は目録にはないが,初心者でも簡単に修得でき,極めて実戦的な効果がある技。
  ・打落(うちおとし)
  ・水月(すいげつ)
  ・斜面(しゃめん)

 
 杖の基本的な使い方の修得を目的とした形で,体の運用と技の操作に変化が多いのが特徴である。基本技を念頭に置いて,正確さを心がけて稽古する必要がある。
  ・太刀落(たちおとし)
  ・鍔 割(つばわり)
  ・著 杖(つきづえ)
  ・引 提(ひっさげ)
  ・左 貫(さかん)
  ・右 貫(うかん)
  ・ 霞 (かすみ)
  ・物 見(ものみ)
  ・笠ノ下(かさのした)
  ・一 礼(いちれい)
  ・寝屋ノ内(ねやのうち)
  ・細 道(ほそみち)


 中段
 杖における体の運用の修得を目的とした形で,全般的に動きが激しく豪快な技が多い。充分気力を充実させて稽古するのが望ましい。
  ・一 刀(いちりき)
  ・押 詰(おしづめ)
  ・乱 留(みだれどめ)
  ・後杖 前・後(うしろづえ)
  ・待 車(たいしゃ)
  ・間 込(けんごめ)
  ・切 懸(きりかけ)
  ・真 進(しんしん)
  ・雷 打(らいうち)
  ・横切留(よこぎりどめ)
  ・払 留(はらいどめ)
  ・清 眼(せいがん)


 乱合
 神道夢想流杖道の組形を総合的に連結して一つの形にしたもの。時間的にも一番長く,実戦的な組形である。
 
 ・大太刀ノ乱合(おおだちのらんあい)
  ・小太刀ノ乱合(こだちのらんあい)

 
 個々の名称は表業と同様であるが,技の内容には格段の相違がある。体捌きや杖の使い方に特別のスピード感はないが,静と動,緩と急,或いは呼吸法に相当の技量を必要とする形。
  ・太刀落(たちおとし)
  ・鍔 割(つばわり)
  ・著 杖(つきづえ)
  ・引 提(ひっさげ)
  ・左 貫(さかん)
  ・右 貫(うかん)
  ・ 霞 (かすみ)
  ・物 見(ものみ)
  ・笠ノ下(かさのした)
  ・一礼 前・後(いちれい)
  ・寝屋ノ内 前・後(ねやのうち)
  ・細 道(ほそみち)

 五月雨
 技は単純であるが,心・技・体が一致しなければ完成しない高度な形。
  ・一文字(いちもんじ)
  ・十文字(じゅうもんじ)
  ・小太刀落(こだちおとし)
  ・ミジン(みじん)
  ・ミジン 裏(みじん うら)
  ・眼ツブシ(がんつぶし)


 五本の乱
 昭和15年頃,神道夢想流杖道25代・故清水隆次師範が中心となり,数多くの技から選出して組み合わせ,総合的に連係して制定された形。技の内容,杖捌きはもちろんのこと,体の運用も連続的で動きも早い。
  ・太刀落ノ乱(たちおとしのみだれ)
  ・左貫ノ乱(さかんのみだれ)
  ・間込ノ乱(けんごめのみだれ)
  ・霞ノ乱(かすみのみだれ)
  ・斜面ノ乱(しゃめんのみだれ)

 奥伝(仕合口)
 杖道修行の最終段階における技で,基本,表,中段,影,五月雨と順を経て修行し,心技ともに一定の境地に達した者だけに伝授される形であり,伝授の域に達するまでには相当の年月を要する。
  ・先 勝(せんがち)
  ・突 出(つきだし)
  ・打 付(うちつけ)
  ・小手留(こてどめ)
  ・引 捨(ひきすて)
  ・小手搦(こてがらみ)
  ・十 手(じって)
  ・見 返(みかえり)
  ・阿 吽(あうん)
  ・打 分(うちわけ)
  ・水 月(すいげつ)
  ・左右留(さゆうどめ)
  ・八通大太刀(やとおりおおたち)
  ・四通小太刀(よとおりこだち)

 秘伝極意(五夢想)
 神道夢想流杖道を長年に渡って修行し,専門的立場にある者で,しかも人格・識見・指導能力等が十分に完成されて「免許」を伝授された者のみに伝えられる形。
  ・闇打(やみうち)
  ・夢枕(ゆめまくら)
  ・村雲(むらくも)
  ・稲妻(いなずま)
  ・導母(どうぼ)